重なる身体と歪んだ恋情

お葬式は出来るだけ身内で済ませることにした。

お祖母様にも知らせないことに。

こんなこと、今知ったら本当に心身ともに疲れて果ててしまうから。


兄は、私のせいで死んだのかもしれない。


だって、私は兄を許せなかったから。

中毒であんな状態になっても『自業自得』としか思えなかったから。

あんなに怖がる兄を見ても、なんの言葉もかけなかったから。

『もう大丈夫』なんて言ってあげたくなかったから。

『早く良くなって』なんていいたくなかったから。

兄なんて、帰ってこなければいい。

そう思ったから――。


火葬場で兄は焼かれ煙と灰、そして骨だけの存在になった。


「大丈夫ですか?」


零れた涙は兄のために流したものじゃない。


「大丈夫、です」


そう答えて、私は涙を拭った。


そして、その日の夜。

自ら私は彼に抱かれた。

こんな私でも彼は受け入れてくれる。

体だけでもいい。

誰かに愛されてると、思いたかった――。
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