重なる身体と歪んだ恋情

クローゼットを開けて並べられたドレスを眺める。

絶対にこんなひらひらした服装のほうが動きにくいに決まってる。

それでもドレスを勧めるのはきっと彼の考えなのだろう。

だったら。そう思ってあの黒いドレスを――。


「……?」


探しているのに見つからない。

真っ黒で胸の大きく開いたドレス。

海外で購入したとか自慢してたドレスは、どこに?


どんなに探しても見つからなくて。

仕方なく別のドレスを身につけた。

多分、彼の好みとは正反対。

真っ白でふわりと裾の揺れるドレス。

それから髪を結いなおして薄くお化粧をして。


「やっぱり大きな鏡は欲しいわ」


そう呟いて部屋の中を見渡した。

ベッド以外何もない部屋。

ここに鏡台を置いて、そうね、本棚も欲しいわ。

そして桜井の家にある私の本を送ってもらおう。

それなら本を読む時に座る椅子も欲しいわ。出来れば机も。

他には……。

どれだけのものがここに揃ったら、私は満足できるんだろう?

そんな考えに思わずため息が零れてしまった。
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