重なる身体と歪んだ恋情
「もうよろしいですか?」
部屋から出るとすぐに如月が頭を下げてそう私に告げる。
だから「えぇ」と答えると彼はもう一度頭を下げて少し先を歩く私の後ろを歩き始めた。
「行ってらっしゃいませ」
屋敷の中ですれ違う使用人がみな同じ台詞を私に投げかける。
みんな私が外出することを知ってるなんて変な感じ。
まるで監視されてるようだわ。
屋敷の敷地を出ると何も言わず如月が私の少し前を歩き始めた。
東京駅までは距離がある。
近くの駅から電車に乗って東京駅までいくの?
そんなことを考えていたら、
「え?」
一台の車が目の前に止まった。
それはタクシーではなくて、
「お待たせいたしました」
私も乗ったことのある桐生家の車。
「東京駅まで車を貸していただくことにしました。お乗りください」
いつのまにそんなことに?
驚く私に、
「どうぞ」
と差し伸べられる手。
如月の手は、男の人とは思えないほど白く綺麗な手をしていた。