重なる身体と歪んだ恋情
揺れる列車の中で必死に如月の腕を掴んで。
ざわついた空間の中で私たちの間には会話らしいものはなにもない。
そっと如月を見上げたけれど彼が私を見下ろすことはなくて。
如月は背が高い。
もしかすると奏さんより高いかも。
年は奏さんと同じくらいかしら?
無愛想だけどすっと鼻筋の通った綺麗な顔。
もう結婚はしてるのかしら?
そういえば、私は彼のことを何も知らない。
ううん。
如月だけじゃない。
小雪のことも、そして奏さんのことも――。
「何か?」
「え? あ、なにも」
そう言って急いで彼から視線を逸らした。
如月は、私のことを知っているのに。
変な感じ。
如月の目には私はどう映ってるのかしら。
わがままで世間知らずな小娘。
きっとそんなところね。
こんな私に仕えることになって落胆したりしなかったのかしら?
奏さんに辞退したりしなかった?
辞めたい、とか思ったりしてない?
列車が大きく揺れて、私は如月の腕を強く握ったけれど。
彼は何も言わず揺れることも無く私の隣に立っていた。