重なる身体と歪んだ恋情
「あ、これ可愛い」
女は誰でも買い物好きだ。
これは少女であっても普遍の摂理らしい。
お昼を勧めれば「一緒に食べたい」など、こういったところは子供だが。
「如月は桐生家に来て長いの?」
「8年になります」
「如月は、結婚しているの?」
「いえ、そのような相手は居ませんから」
なんだ? この会話は。
もしかして懐かれたのか?
いや、それは使用人として喜ばしいこと、なのだろう。
桐生家とは違い、楽しそうにお喋りをしながらパンを頬張る千紗様。
これが本来の姿なのかもしれない。
そう考えると彼女も可哀想なお方だ。
これからのことを考えれば余計でも。
「この後、大丈夫ですか?」
私の声に首を傾げる千紗様。
あぁ、本当に奏様も性格が歪んでる。
自分の情婦の店に妻である千紗様を連れていけだなんて。