重なる身体と歪んだ恋情
「あら、如月様」
右の口の端にほくろのあるこの店の店主・八重。
奏様の好みと言うのは基本、こういった女性が多い。
外に出てひとり立ちした、強い女性。
その後ろ盾になるのが楽しいのか、奏様は彼女のような女性を好んで相手になさる。
問題のは、
「今日はこちらのお嬢様? なんて可愛らしい。桐生様の守備範囲はとても」
「八重様。こちらは当家の奥様、千紗様です」
誰もが勝気な性格、と言えばいいのか。
負けることを良しとしない人間ばかりだということ。
彼女達からすればこんな小娘……、もとい、お嬢様に彼を浚われるなんて思いもしなかっただろう。
それは私も同じ思いだが。
ドレス選びは私が口を挟む必要は無い。
生地からデザインから、八重が提案するものを千紗様は少し悩んで決めていく。
八重から見れば千紗様は『敵』とも言えないほど幼いか。
だから完全に彼女を『お客様』扱いで。
それには少しホッとした。
他の女性たちも八重のように振舞ってくれればいいが……。