重なる身体と歪んだ恋情

それにしてもここにあるドレスは先端を行き過ぎてる。

ここまで短い丈のドレスはヨーロッパでも珍しい。


「これからはこういったものが流行る時代なのです」


確かに彼女の言うとおりかもしれないが……。

ドレスを身体に当てられて少し困ったように私を見る千紗様。

だから、


「とてもお似合いになると思いますよ?」


そう言うと千紗様は、


「……そう、かしら?」


といって鏡の中を自分を眺めて、小さく笑う。

いや、実際似合ってるから問題は無いか。

それにドレス選びをしてる彼女は実際楽しそうに見える。

小さくとも、女性。

だからその後、街中を歩くことを勧めれば彼女は嬉しそうに微笑んで、


「あ、あのドレス素敵ね」


とはしゃいで。

これが年相応の姿なのだ。

それが証拠に、


「そろそろ帰りましょうか」


こんな私の声には俯いてしまって。

可哀想だとは思うが仕方ない。

いずれ帰らなくてはいけないのだから早いか遅いかだけの話。

彼女はあの家に帰りたくは無いのだろけど。
< 74 / 396 >

この作品をシェア

pagetop