紫水晶の森のメイミールアン
 警備の厳しい城内。不審者がやって来る事は先ず無い。いったい誰なのだろう?ちょっと、いつもと様子は違うが、居留守を使う訳にも行かない。仕方なく、この出立ちのまま出る事にした。

「はーい。どなたですか?」

 木戸を開けると、菜園労働者の質素な服装とは違う、とても上質の服を着た王宮の内官らしき人達が数人立っていたので、驚いた。
 
 相手の方も、あまりにも汚れてて見窄らしい格好の女性が現れたので、驚愕したような表情を浮かべている。

「貴女様は、メイミールアン様でしょうか?」

 驚きながらも、木戸を叩いた内官らしき男性の1人が口を開いた。

「はい。左様ですが、どちら様でしょうか?」
 
ルアンのしっかりした受け答えに、内官らしき男は、少しホッとしたような安堵の表情を浮かべた。身なりはともかく、どうやら頭の方はまともそうだと言う雰囲気の表情だ。

「私は王宮内の雑務を取り仕切る内侍内官ですが、メイミールアン様の境遇に尽きまして、王様が大変ご心配されておりまして、突然で申し訳御座いませんが、お尋ね致しました」

「まあ、そうでしたか。こんな出で立ちで大変驚かれたと思いますが、今、ストーブの掃除をしておりましたの。酷い姿をお見せして心配されたかもしれませんが、私は気ままにやっておりますので、ご心配下さいませぬように、王様にお伝え下さいませ」

 エメリオス王は、元大国の王女が下女のような出で立ちで、ストーブ掃除などと、とても哀れに思えた。これは即何とかせねば…。
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