サワーチェリーパイ
そして、虹太の指示通りにスリラーマンションに向かうも、陽生が怖がるどころか楽しそうにしていたため、作戦は失敗に終り途方に暮れたまま夜を迎えた。


「パレードも終ったし、そろそろ帰るか」
「あ、うん」


何度も何度も告白しようとして、タイミングを逃した情けなさを感じながらトボトボ歩く晴斗に、手を差し伸べる陽生。


「はぐれるから、手つなげよ」


その手は、女神の手よりも美しく、パレードの電飾よりも輝いて晴斗の目に映る。


すぐに手をつないで歩き出した瞬間、背後で金切り声が聞えた。


「サイテー! 」


振り返ると、春秋女子のあの女の子が友達と立っている。


「晴斗、ひどい! 」


状況が飲み込めない2人の前に立ち、晴斗に平手打ちを食わせる彼女。
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