本当の私は甘いかも。
「パパ…気持ち悪い」
私がやっと声に出すと社長は慌てて離れた。
「おぉすまなかった。余りにも可愛くてついな、テへ」
……。えーと、どういう反応をすればいいのかな?
西条さんのカンペを見ると、“キモッ”と嫌そうな顔で言って下さい、と書かれている。
「キモッ」
私は書かれた通りに演じた。
「相変わらず冷たいなぁ」
社長は少ししょぼくれたけど対して気にしてない、というより慣れているようだった。
てか…有理お嬢様と社長って毎回こういう下りやってたのかな…。
結構有理お嬢様は社長を邪険に扱っていたのね…覚えておかなきゃ。
「一郎様は有理お嬢様にお話しがあられたのですよね?」
なかなか本題に入らない社長を西条さんが急かす。
「そうだった。有理が余りにも可愛くて忘れておったわい。テへ」
社長はペロっと舌を出して、にかっと笑った。
カンペカンペー。
スルーして“話しって何”とお聞き下さい。
スルーしちゃうんだ…なんか社長可哀想になってきた。
でも私は有理お嬢様なんだから、なりきらないと!
「話しって何?」
「実はな、明後日に松坂の奴が主催のパーティーがあって、」
言いながら社長は机の引き出しをあさり始めた。
スルーされたことをスルーするなんて社長強者……
って反応するとこ違った。
パーティー?松坂の奴?
西条さんに目を向けると社長の目を盗んで私の隣に来てくれた。
「松坂とは、食品から洋服と様々な分野で活躍しています、今急成長を遂げている株式会社の松坂屋のことでございます」