本当の私は甘いかも。


「パパ…気持ち悪い」


私がやっと声に出すと社長は慌てて離れた。


「おぉすまなかった。余りにも可愛くてついな、テへ」



……。えーと、どういう反応をすればいいのかな?



西条さんのカンペを見ると、“キモッ”と嫌そうな顔で言って下さい、と書かれている。



「キモッ」



私は書かれた通りに演じた。



「相変わらず冷たいなぁ」



社長は少ししょぼくれたけど対して気にしてない、というより慣れているようだった。



てか…有理お嬢様と社長って毎回こういう下りやってたのかな…。



結構有理お嬢様は社長を邪険に扱っていたのね…覚えておかなきゃ。



「一郎様は有理お嬢様にお話しがあられたのですよね?」



なかなか本題に入らない社長を西条さんが急かす。



「そうだった。有理が余りにも可愛くて忘れておったわい。テへ」



社長はペロっと舌を出して、にかっと笑った。



カンペカンペー。



スルーして“話しって何”とお聞き下さい。



スルーしちゃうんだ…なんか社長可哀想になってきた。



でも私は有理お嬢様なんだから、なりきらないと!



「話しって何?」



「実はな、明後日に松坂の奴が主催のパーティーがあって、」



言いながら社長は机の引き出しをあさり始めた。



スルーされたことをスルーするなんて社長強者……


って反応するとこ違った。


パーティー?松坂の奴?


西条さんに目を向けると社長の目を盗んで私の隣に来てくれた。


「松坂とは、食品から洋服と様々な分野で活躍しています、今急成長を遂げている株式会社の松坂屋のことでございます」



< 8 / 35 >

この作品をシェア

pagetop