緋~隠された恋情
「彼女かわいい系だな。」


そう言って近づいてきた平は、

私の目の前のカクテルを手に取るとくいっと飲み干した。



「ちょっとそれ私の」


「温まっててまずい。

 これでも飲んでろよ。」


目の前に差し出したのはキンキンに冷えた白のグラスワイン。


「おいしい。」

「だろ?」


平は私のグラスに口をつけたのを見てから、満足そうに笑った。


「植木先生は彼女を知っているの?」


「いや。
 
 でも、

 新から聞いたことはあったかな。


 本気になれる人が出来たって。」


本気になれる…

お兄ちゃんが…


「そんな顔するな、もう終わった話だろ。


 しかもあいつが振られたんだ。」


?平、あたしを慰めてる?


「センセ、なんで?今日は優しい?」


「久しぶりに会った自分の女に優しくしたら変か?」


「私、先生の女じゃないですけど。」


「じゃあ、誰のだって言うんだよ。」


「私は私。誰のものでもない。」


「かわいくないヤツ。」


「生まれつきです。」


平は「ハハハ」


と笑いながら私から離れていった。










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