図書室で、恋。
あたりはかなり静まり返っていた。
「遅すぎる。」
私は自転車置き場にポツンと取り残されているようだった。
どうしたんだろう?
全然帰ってくる気配がない。
メッセージの返事も何も返って来ない。
もしかして、先に帰ったとか?
いやいや、でも自転車置いてあるしそんなわけないよね。
日が傾くにつれ、心細くなる。
どうしよう…?そんなことを考えていると、人の気配と声がした。
間違いなくそれは悠太の声で、やっと来た、と思っていたら私はそのまま言葉を失った。
「本当に、あの…大丈夫ですか?」
「うん、わりぃな。ってぇ…」
「あー、先輩っ……もう無理しないでください。」
目の前には足を引きずりながら歩く悠太と、その悠太を支えながら荷物を持つ女の子。
「あぁ、陽彩。まだいたのか。」
「まだいたって……どうしたの?」
悠太に駆け寄りたかったが、どうしてか足が動かなかった。
「先輩…荷物はどうしますか?」
「あぁ、カゴに…入らん分はコイツに渡して。」
そう女の子に言いながら、顎で私を指した。
女の子は手際よく悠太の荷物を自転車のカゴに入れた。
そして私に丁寧に会釈をした。
「悠太先輩、練習中に足を怪我されて……。あ、私、マネージャーの湯川 芽衣(ゆかわ めい)と言います。」
「あ、あぁ…」
「では、私はこれで失礼します。お疲れ様でした。」
湯川さんは私にもう一度丁寧にお辞儀をし、悠太にも頭を下げ来た道を戻って行った。
「あぁ、湯川!さんきゅーな!」
悠太は走り去る小さな背中にそう言った。
「お大事にしてください。」
悠太の声にもう一度湯川さんが頭を下げ、その小さな姿を私と悠太は見送った。