図書室で、恋。



結局私は図書室から逃げ出すことも出来ず、大和くんに言われるがままに中へと入った。


もう、なにがなんだか分からなかった。

時間を戻せるなら、数分前の私に今日は図書室には行くなと言いたい。


私にとって安らぎの場所でもある図書室、そして大和くん。

まさかこんなことになってしまうだなんて…


「池本先生…だよね。」


いっこうに喋る気配は無く、窓の外ばかり眺めている大和くんに私はおずおずと喋りかけた。

本棚に腰を掛け、窓の外を見つめる大和くんの横顔は、やっぱりかっこよかった。


特別怒っている様子もなく、驚いている様子もなく、お互い少し落ち着いたのか、私も平常心を取り戻しつつあった。


池本先生は、今年新任で入って来た英語の先生。

1年生の担当だから、関わりは無いけれど、人懐っこい笑顔で可愛らしい印象を始業式の時に感じた。


「今日が最後っていうやつ。」

「え?」

大和くんはやっとこっちを向いたかと思うと、意地悪そうに笑った。


「いつの日か、羽目はずしてそういう関係になってな。ま、俺にしてみりゃ一夜限りってやつだったんだけど、どうも男と女の思考は違うらしい。」

「……。」

「しつこいから、ラスト1回ってことで、どうにか向こうも納得してな。ま、それだけだ。」


ふっと息を吐くかのように笑った大和くん。

私はそんな大和くんを見てまた言葉を失った。


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