図書室で、恋。


「あれれ、いないの?」

いつも小さな返答がするのに、今日はシンと静まり返っている。

カウンターのところで私は足を止めた。

「ありゃ、寝ちゃってる。」


眼鏡をかけたまま、カウンターに伏せている大和くん。

その隣には読みかけの難しそうな分厚い本。


私は大和くんの傍に駆け寄った。

司書の永田大和(ながた やまと)、この高校の図書館司書の人。

一応教員免許も持つため先生なのだが、私は最初からずっと大和くんと呼んでいる。

まだ社会人3年目の25歳。

歳もそんなに離れていないから、私にとってお兄ちゃんみたいな人。

と言うのも、私には10歳離れた27歳のお姉ちゃんがいるから、余計にそう思えるのかもしれない。


それにしても…綺麗な顔。
多分私だけが知っている、大和くんの眼鏡をはずした素顔。


大和くんの存在すら知らない生徒が多い中、知っている人でも、もっさりした髪の冴えない眼鏡、なんて思っている。

でも実は…けっこう美男子だったりする大和くん。

あまり大和くんのことを知っているわけじゃないけれど、物静かな知的な雰囲気に魅力は感じるんだ。
……あ、変な意味じゃなくてね。


柔らかそうな髪だな~なんてそっと手を伸ばしたとき、私の気配に気づいたのか、大和くんは「ん…」と言って小さく動いた。

「大和くん?」

「……。」


私の問いかけに大和くんは小さく動いて反応し、ゆっくりと目を覚ます。

その動作1つ1つがあまりにも綺麗で、まさに画になるっていう感じ。


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