図書室で、恋。
「岩崎さん…もうそんな時間でしたか。」
眼鏡をかけ、時計を見る。
「うん、おはよう大和くん。」
「…おはようございます。いつの間にか眠っていました。」
大和くんはクスッと笑いながら、立ち上がる。
私もカウンターから離れ、いつも座る席へと向かう。
「今日は何していたの?」
「本の整理です。」
「最近そればっかりだね。」
「暇ですから。」
「ふーん。」
大和くんは多くは語らない。
私から喋りかけない限り、ほとんど黙ったまま。
何を考えているのか、思っているのか。
もう出会って1年以上経つのに、大和くんのことはよく分からなかった。
知っていることは、美男子だということくらい。
「さてと…」
そして私は、入学して以来、ずっと授業後は図書室へ向かっている。
ここで課題や予復習をしているのだ。
―――悠太の部活が終わるのを待ちながら…
悠太との登下校の時間は、私にとって大切な時間。
歳を重ねれば重ねるほど、昔みたいに、一緒にいる時間は減るもの。
だからこそ、登下校の時間を失いたくはなかった。
図書室からグラウンドはよく見えた。
日が傾いてきたころ、ピーッと鳴る長いホイッスルの合図が、サッカー部の練習の終わりを知らせる音。
私は時折、悠太のサッカー姿を見ながら、こうしてここで過ごしている。