学園怪談2 ~10年後の再会~
「ワウウン」
小野田を守るかのように、ジローが大きな巨体をくっつけて暖めてくれる。
「あったかいなぁジローは。ありがとう。お前がいなかったら俺たち雪崩で死んでたかもな……」
ジローの身体を撫でながら、小野田はゆっくりと意識を失くしていった。
「アオオン」
 最後に小野田はジローの優しげな瞳を見た気がした。
 ……。
「……い……おーい」
 遠くで誰かの声が聞こえた気がした。
「だ、誰かが……助けが来たんだ」
 突然、小野田の側で丸まっていたジローは、起き上がり遠くに人の影を確認すると、小野田の顔をペロペロと舐め始めた。
「ワウン」
 その優しげな鳴き声が、小野田にはジローが自分に『さよなら』を言っているかのように聞こえた。
「な、どうしたんだよ急に……あっ!」
 信じられない事が起こった。ジローの姿が透けていく。淡い光に包まれながら、少しずつ少しずつその姿を消していっているのだ。
「ま、待って! ジロー! 行かないで! 行かないでよおおお!」
 骨折による高熱のために、再び意識の朦朧としてきた小野田は力なくジローに手を伸ばすと、ゆっくりと気を失った。
 ……。
「はっ! ここは」
 再び小野田が目を覚ますと、そこは町の病院のベッドの上だった。ベッドの隣には一郎の姿もあった。やはり折れていたのか、右腕は首からの包帯で吊るしていた。
「小野田、気がついたか」
「……助かったんだな俺たち。はっ! ジロー、ジローは?」
 ……そして数日後、二人は病院を抜け出して家の裏庭に来ていた。そこには棒の突き立った大きな土の山がひっそりと築かれていた。
『ジローのおはか』
 汚い子供の字で書かれた墓標に小野田は涙した。
 
……二人を救ってくれたジローは……死んでいた。

後から聞いた話ではジローは雪崩から二人を助けた際に木々が内臓に突き刺さり、その時点で重傷だったらしい。それでも小野田を暖めて守っていた。
「ジローはな。俺のことも助けてくれたんだ」
 肩を震わす小野田に一郎が鼻を鳴らしながら言った。
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