学園怪談2 ~10年後の再会~
『……た……す……けて』
 聞こえる、感じる。微かにだけど、この柵の向こう側。細い吊り橋の先から何か助けを求める声のような感覚が。
「先輩、この先に、今まで自殺した人たちが見た何かがあるんですよ」
 霊感を持つ故か、彼女は興味を惹かれてしまって、どんどん歩を進めていく。
「だ、ダメだ。危険すぎるよ。暗くなってきたし、霧も出てきた。足元だって見えないし。せめて明るい時じゃなきゃ」
 しかし、僕も彼女ほどじゃないにせよ、霊が語りかけるメッセージが気にかかっているのも事実だ。この向こうに、本当に自殺者が見た何かがあるのか?
 僕と芳江ちゃんは手を繋いで先に進む。釣り橋は人一人がかろうじて通る幅しかなく、霧と闇のせいで足元が見えない。
『く……るな、立ち……去れ』
 しばらく進んだところで、再び声のようなメッセージが伝わってきた。さっきよりもずっとはっきりとしており、今度は本当に話しかけられたようにさえ感じた。
「芳江ちゃん、ダメだ、霊が警告している。これ以上進むのは危険だ」
 僕はしっかりと手を握り締めたまま足を止めたが、彼女はそれでも先へ行こうとする。
「先輩だって分かってるでしょ! 今の霊からのメッセージとは逆の感情が込められているのを! 本当は来て欲しいんだよ。何かを待ってる!」
 ……そう、彼女の言うとおり、霊はメッセージでは僕たちに帰るように警告をしているが、その裏に潜む感情では僕たちに、もっと近づいてほしいという感情が伺えた。矛盾する二つのメッセージ。僕は一体どちらを信じればいいのだろうか?
 それでも、芳江ちゃんは好奇心には勝てず、先へと進む。
「ま、待って。一人は危険だよ」
 僕は慌てて手を繋ぎなおして後を追った。
『帰れ……帰れ!(もっと、こっちに来てくれ、助けてくれ)』
 つり橋を進むに連れて、メッセージが強さを増す。僕は、帰ろうという恐怖と、先に進もうという使命感にもにた好奇心で押し潰されそうになった。
「うう、ううう……うう」
 芳江ちゃんも同じ心持ちなのか、次の一歩を踏み出す足が震えている。辺りは完全に闇に飲み込まれ、僕たちがどれだけ進んできたのか、どっちから進んできたのかわからない程だ。
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