学園怪談2 ~10年後の再会~
 そこは能勢さんがいた場所。机やイスが積み上がり、彼の足や腕が力なく見えている。
「だ、だ、大丈夫ですか!」
 私も慌てて続き、大ちゃんさんと机やイスをどかせる。
「あいててて」
 すぐに能勢さんが這い出てきたのにはホッとした。しかし、額から血を流していてあちこちに痛々しいアザができていた。
「大丈夫か能勢?」
 大ちゃんさんはズボンからハンカチを取り出すと、能勢さんの額のキズにあてた。
「能勢さん……」
 その時、淳さんが歩み出てきた。そしていたわるような、それでいて厳しさも含んだような口調で話しかけた。
「この場の霊力を発散させるために、わざとポルターガイストを起こしたんですね?」
 淳さんの意外な言葉に、一同が驚いて次の言葉を待つ。
 私は実験前に、淳さんがつぶやいた言葉を思い出していた。
『これで、この新座学園に充満した霊力がどの程度なのかを知ることができる。能勢さんは何も言わないけど、身をもってそれを調べるつもりなんだ……』
「……ああ、キミにはバレてたか」
 能勢さんは弱弱しくだが、笑顔を作ると下をペロッと出した。
「一体どういう事なんですか? 淳さん、説明してください」
 私はいてもたってもいられず、説明を求めた。
「能勢さんがこのポルターガイストの起こりやすい状況で、わざと危険な実験を行ったのには二つの理由がある。一つはこの場の霊力がどの程度なのかを知るため。そしてもう一つは……危険なレベルの霊力だとわかったなら、それを発散させるため……自分を犠牲にしてでも」
 淳さんの言葉に、私は先ほどのポルターガイスト現象を思い出した。確かに物が浮遊してあちこちに激しく散らばったが、能勢さん以外はだれ一人として怪我をしていない。全ての災厄を一手に引き受けたかのような状態だ。
「へへ、まあ成功したよね。かなりの霊力が集まっていたけど、なんとか被害は最小限で済んだみたいだ。これで少しでもこの場が安全になれればいいんだけど」
 大ちゃんさんが能勢さんを支えながらも、頭を叩いた。
「あいたっ!」
「ったく、お前は霊感が高いからって無理しすぎなんだよ。体を張るんだったら俺の役目だろうが」
 

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