学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……体育館。
 ついに来た。このどこかに井上孔明の蘇りつつある体が眠っている筈なのだ。
外の騒がしさとは全く別に、この体育館の中はシンと静まり返っている。
 ……でも、どこかに騒動の元凶である井上孔明が存在する。私たちは何としてもそれを阻止しなければならない。
「いったい、どこにあるんでしょうか?」
入口から見渡す限り、何も見つける事は出来ない。
「あ! あれを見て!」
 淳さんの言葉に体育館中央に……井上孔明の魂が人型を作ってこちらを見ていた。
「来るな……俺の復活を邪魔するな」
 その声は邪気に満ち、油断すれば取り入って来るような、そんな危うさを感じさせた。
「みんな! ロザリオだ。ロザリオを孔明に向けるんだ!」
 淳さんは赤い本のページを見ながら、みんなに指示を出した。
 ロザリオが3つ。井上孔明に向けられる。
 パアアアア! そのロザリオから淡い光が孔明を包み込む。
「ぐあああああ! やめろおおおおおおお!」
 明らかに孔明は悲痛の声を上げた。その禍々しい力は次第に弱まり、煙のような魂は次第に薄れて消えてしまった。
「や、やったのか?」
 3つのロザリオの一つを向けていた徹さんが誰にともなく質問する。
「いや! かなり弱まっているはずだけど、それでも肉体を見つけないと終わらない」
 淳さんの言葉に全員が体育館の中を見渡す。
「でも、いったい何処に……」
 私の言葉には、斎条さんが答えてくれた。
「私、わかりました。こちらです」
 みんなを先導するように歩きだした斎条さんがたどり着いたのは体育館の地下倉庫にある鏡の前だった。
「鏡……あ、そういう事か」
 能勢さんの言葉に徹さんと私は謎が解けず、ただ間抜けな顔を鏡に映し出していた。
「なるほど、確かに『斎条弘子』が映っている。自分自身を映す物……つまり鏡って事か」
 淳さんが納得したように説明した。
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