学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……ここは10年前、13階段の話を淳さんがした場所だ。その時も悪魔が召喚された場所であり、思えば一番悪霊の世界と現実の壁が薄い場所なのかもしれない。
「よし、下がって!」
 大ちゃんさんは倉庫にあった鉄棒を取り出すと、鏡に向かって構えた。

 ……今、全ての謎が解き明かされる。この中に井上孔明の体がある……。

 ガシャアアン!
 大ちゃんさんが鏡を叩き割ると、そこに大きなガラスのケースが現れた。
 ……まるで、鏡がもう一枚あるのかと思えた。目の前の等身大のケースの中には一人の青年が収められていた。顔立ちの整った美男子と言っていいほどの青年。今の自分たちとそう変わらない歳に思えた。
「これが……井上孔明。体は普通に存在するじゃないか」
 確かに彼が学園を卒業して数年後に死んだ事を考えれば、私たちより少し年下という事になる。
 ……キィィィィン。
 孔明の体が震え、甲高い音と共に彼の目が開いた。
「……邪魔するな……もうすぐ、もうすぐ復活できるのに……」
 孔明は低い唸るような声と共に、直接的な会話を始めて試みてきた。
「あなたは死んだ。死んだ人間が生き返るのは許される事じゃない。『死者の書』には蘇生の方法は確かに書いてある。でも、その肉体の向う先は必ず破滅だ」
 淳さんが赤い本を開き、孔明に言葉を投げかける。
「……俺は……死なない……死ぬことが怖いだけじゃない……人は簡単に人を忘れる……そして、いつかはこの世で誰も……俺の事を知らなくなる……存在が消えるのが……怖い」
 孔明が、自分の感情を言葉にはっきりと述べた。
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