学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……マグロ拾い。一般には募集してないけど、特別なツテを使って一度だけ俺はやったことがある。最悪な仕事だ。都心を中心に網の目のように伸びる鉄道の数は何十……何百。一日に走る電車の数はその何百倍にもなる。
そして必ずと言っていい程起こる人身事故。新聞を見れば地方版なんかに必ず1件は乗る飛び込み自殺の記事。
 そう、マグロ拾いの仕事とは、飛び込み自殺をしてちぎれ飛んだ人の死体の後始末の事だ。
 何をどれだけ悩んで飛び込み自殺をしたのかは分からないし、そこに到るまでの各人の行動は様々だが、一つだけ同じ事はマグロになった死体はどれも変わらないっていうことだけらしい。
「おお~い、バイト~。今日の仕事はキツイからな覚悟しておけよ」
「あ、はい……」
 時給の高さにつられて応募した仕事だったが、正直に止めておけばよかったかと思っていた。やはりナマの死体……それもちぎれ飛んだ死体を見る勇気は想像がつかなかったからだ。
「朝食は抜いてきたろうな?」
「あ、はい。食べてません」
 現場のチーフは気さくな人で、もう何年もこの仕事をしてきているらしい。この仕事を長く続ける人は本当に稀で、数十人に一人でも1年続くかどうかというものらしかった。今日は俺とチーフを含めて4名での布陣でのぞむようだ。他の2名のメンバーも俺と同じく未経験者と聞いてようやく気分が少し楽になった。
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