愛を知る日まで
うちの養護施設のヤツはどいつも捻ねて荒んだガキばかりだけれども、中でも手に負えないのが俺ともう一人、彰(あきら)ってヤツだった。
彰も俺と同じ、生後まもなく親に棄てられた正真正銘の天涯孤独児だった。
歳は確か俺より3つ上だったと思う。
赤ん坊の頃からここにいる俺より更に長く居ると云うだけで 、彰がどれほどの強者か分かるだろう。
ただ、彰は己の身に降りかかった不幸を非行に走ることで抗おうとしていた。
まだほんのガキの頃から万引きを繰り返し、カツアゲをしては欲しいものを手にいれていた。
見つかって警察に突き出された事も1回や2回じゃない。そのたびに迷惑を掛けたと施設長に気を失うまで折檻されてたが、 彰がそれをやめる事は無かった。
当然喧嘩はダントツに強く、うちの施設で彰に刃向かえるヤツは誰もいなかった。
ガキの頃は荒れて誰も手の付けられなかった彰だが、中学生になると仲間を作り出しあっという間に何人もの舎弟を束ねる不良グループの頭になっていた。
「柊、お前も仲間にしてやろうか?」
何回かそう声を掛けられたコトがある。
彰は俺に天涯孤独同士で親近感を持っていたのか、はたまた俺の強さを気に入ってたのか分からないが、俺を仲間にしたがっていた。
けれど生憎、俺は犯罪にも非行にも興味は無い。
ましてやくだらねえ手下や仲間とつるむなんて真っ平ごめんだった。
「あんたのしてるコトを俺はダセエとしか思わない。」
クソ生意気な断り方をしても彰は
「お前は俺以上に捻ねたガキだな。」
そう言って笑うだけで、俺と敵対する事は無かった。