愛を知る日まで
後になってよく「あんな環境でよくグレなかった」と感心されたけど、俺は純粋にそういうコトに興味が湧かないだけだった。
万引きやらカツアゲやら、コソコソと悪いコトして何が楽しいのか分からなかったし、そこまでして欲しい物も別に無かった。
ダセエ格好や金髪もイヤだったし、施設長と同じ臭いがするタバコなんて死んでも吸いたくねえ。
喧嘩だって、俺は売られたからやり返すだけで、わざわざバカ同士で争って力を誇示するコトに興味は無かった。
そんなくだらないコトで警察に捕まったりするんなら、俺は施設長のおっさんをぶっ殺して捕まる方が100倍いいと思っていた。
ある時、何回目かの誘いをそう断った俺に彰は
「俺も不幸だけどお前は多分それ以上だな。俺はバカなりに欲しい物や守りたい物があるけどお前にはそれすらねえ。多分お前は一生笑わねえよ。」
柄にもなく真面目にそう言った。
その時はなんとなく見下されたような気がして腹がたっただけだったけど。
その時の彰の言葉が理解できたのは、俺がこの地獄から解放された後だった。
そして、その日は突然に訪れた。