恋人の余韻




私は物心ついてからずっと、恋愛対象に男女の別がなかった。

それは抑えがたいと同時に淡く穏やかで、多くが憧憬と呼んでよいうちに過ぎていった。

自分がレズビアンなのか、それともバイセクシャルであるのか、突き詰めるに至ることなく大学を卒業し小さな企業に就職した私は、それまでの、多くの出逢いの中から恋愛対象を選んでいた学生時代とは異なり、限られた出会いの中で目まぐるしく生活するようになった。

シンプルな選択の中のごく自然な流れとして、会社で出会った夏目くんと付き合うようになった。

彼は多くの初めてを私に与えた。
キスや体を重ねるという経験が私にもたらした落ち着き。

もう男も女も選ぶ必要がなくなった私はとてもさっぱりしたのだ。

旅は終わったんだ、自分を掘り下げたり見つけだそうとするようなそれは。結局私は男の人を愛する運命に生まれたんだ、そう思っていた。

でも、それは間違いだった。


私は夏目くんと別れなくてはならない。



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