らぶピクチャー(完)
そのとき、ふと目に入った受話器。
重力に逆らわず、ブラリとぶら下がっているそれに手を伸ばし、うちは耳にあててみた。
『お掛けになった電話番号は、電波の届かないところにあるか、電源が…』
普通に会話がされていたはずの相手は、お母さんでもお父さんでもなかった。
「ウソや・・・。」
でもそれはウソやなく、真実やった。
その受話器を元に戻し、うちは男の子が運ばれていった方向へ向かおうとした。
でも、足がうまく動かへんくて、なかなか進まれへんかった。
足が、体が痛いから。
それもある。
けど、今は、それだけやなくて・・・足も体も震えてた。
数分前まで元気に話してた人が、急に目の前で苦しみだして、どうすることもできへんかったこと。
それが、うちの頭の中で、心の中で騒ぎ立ててた。