らぶピクチャー(完)

「鈴木さん、輝樹くん本調子じゃないみたいだから、今日は帰るわね?また相手してあげてね?」




「あ、はい。」




それもそうやわな。



発作起こしてすぐ調子が戻るとは限らへん。




看護師さんがクルッと車椅子を回して、病室を出て行こうとしたとき「お姉ちゃん」と輝樹がうちを呼んだ。




「ん?どないした?」




「・・・お父さんとお母さん、来ないんだ。もう。」




「え?」


後ろ姿しか見えへんけど、心なしか、さっきよりも小さな背中になったような気がした。




「・・・失礼しますね?」



そのまま輝樹は、看護師さんに車椅子を押されて出て行った。





『お父さんとお母さん、来ないんだ。もう。』



という言葉が、うちの頭の中を埋め尽くしていった。




その言葉の意味を、この数分後知ることになる。

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