andante




梨子さんは何も言わずにわたしに近付くと、言う。




「…優一と付き合ってるなんてどうでもいい。」



「…え、」



梨子さんは長い髪を耳にかけると勝ち誇ったようにわたしを見る。



わたしは足が震えるのがわかった。



どうでもいい、ってどうして?



梨子さんは優ちゃんのお見合い相手だし、優ちゃんの事が……





「優一、ピアノ弾かないでしょう?」



ピアノ………?



確かに弾いている所はまだ見ていない。





「弾いて、って頼んでみなさいよ。昔みたいに。」




「…どうして、ですか?」




「あなたが優一にしたことがわかるからよ。」



優ちゃんにわたしがしたこと?





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