andante
「…優一がお前に会いたいって。お前が来るまで待ってるって。」
扉の向こう側で千広くんは言う。
わたしに会いたい、?
「……会えないよ。」
ガチャリと扉が開く。
「…そんなに泣くくらいなら優一にぶちまけろよ。言ったろ?お前が悪いんじゃない。」
泣いたって変わるものは何もない。
わかってはいるけど、止まりはしないの。
「…送ってやるよ。準備しろ。」
わたしが動かないから千広くんは無理矢理わたしの腕をつかんだ。
「…別にいい。その顔で優一に会えばいい。」
「…いや、行かない」
千広くんは聞かなかった。
外に出てヘルメットをわたしにかぶせるとバイクに乗せる。
動きだすバイク。
わたしはその間ですら涙が止まらなかった。