andante
優ちゃんの音楽教室の前でバイクは止まる。
優ちゃんはレッスンが終わったのか、外で待っていた。
何も変わらない。
優ちゃんはわたしを見ると優しい笑みを浮かべた。
それがわたしには痛かった。
千広くんはわたしを降ろすと何も言わずに帰ってしまった。
「…ひさしぶり、比菜ちゃん。」
「…うん。」
「泣いたの?」
わたしは首を横に振った。
優ちゃんがわたしの頬に手を伸ばした。
わたしが傷つけた手を。