不思議の国の俺。
「…粗末なものでしょ、黒い耳。
白ウサギのお父様の子なのに
黒いウサギなんて、ね…」

いや、そもそも

なんでウサギの耳なんだ。

いい感じにシリアスに喋ってるし…

「そういえば、ケンジの耳も見せて。」

「お、おぅ…」

耳に掛かった髪を掻き上げる。

「え……!?ケンジ…
あなた、人間だったの!?」

「…?当たり前じゃねえか。」

「あぁ、空の穴が開いてる…!
って事は、アリスお母様と同じように、
あの穴から来たの…?」

アリス…お母様?

「はっ、あなた早く耳を隠して!」

「え?え、あぁ…」

「走るわよ!」

トランプは、強引に腕をつかみ走り出した。

この時、俺は走ることに夢中だった。

気づくことが出来なかったが、

トランプが、母親の名を呼ぶのが、

どんなに辛いかを、俺はまだ

分からなかった。
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