ALONES
「でも、残酷なものですね。私を守った殿下は病に侵され、孤島に送られてしまいました。
私を庇ったからだろうか、私と関わったからだろうか。幼く、理由も分からなかった私は、意味を考える事もなく、何度も自分を責めました。
殿下は何もない私にとっての唯一の希望だった。それなのに、と。
悔しくて、悲しくて、私はいつも近くにいた貴方に、何度も八つ当たりをしてしまいました。
それなのに貴方はいつも何も言わない。私を咎めない。
いっそ、アストリッドのように私を何度も“七光り”と蔑んでくれたら、無駄な良心さえ芽生えなかったのに…と何度思った事か。」
その一言に、ランベールは大きくため息を吐いた。
この子は昔から鈍感で、不器用で、まるで相手の気持ちが分かってない。
単純で、一途で、独りで突っ走っては粉々に砕けて。
なんだかな。
ランベールは口を開く。
なんだかな。それでも口を開く。
「正直な所、お前が第一王子の専属騎士に任命された時は“親の七光り”だと思ったさ。俺やアストリッド、王妃専属騎士のヨア・リコルタは、王国騎士団から成り上がって今の地位にいるからな。
だからアストリッドの気持ちは分からないでもない。」
――だが。
と、ランベールは続ける。
「アルヴァスティン様が孤島に送られたあの時、お前は任を解かれ、一度王国騎士団に入っただろう。
その時にどれだけお前が努力していたか、俺は知っている。
夜も眠らず、今みたいに手が血だらけになるまで何度も何度も一人で稽古をしていたことを俺は知っている。」