ALONES
「“親の七光り”だと、何度も言われました。昔も、変わらず今も。けれど私はそんな風に言われるために騎士になった訳でもなく、正直好きで騎士になった訳でもない。」
だからそう言われることが、余計我慢ならないのです。と、レイチェルは続けた。
「ジークハルト・ラ・ヴァルニエ。王族専属騎士であり、国王の第一専属騎士であった父は、私にとってあまりにも強く、偉大で、私の全てでした。
私はいつもそんな父に手を引かれ、言われた通りの事を行い、
母が家から出て行っても、私はいつまでも父の話を聞き、受け入れ、いつの間にか騎士を目指していた。
だから、遠征中に王を庇い死んだと知った時、騎士とは何なのかと思いました。
正直父が死ぬくらいなら、王が死ねばよかったのにと思った。
だってそうでしょう、父はこの国の為に家庭を捨て、母を捨て、私の平凡な人生を奪った。それだけの犠牲を払っておきながら、自分も死ぬなんて。
そして残された私は城でただ一人、第一王子の専属騎士として働き、“親の七光り”だと言われ続けた。
もう意味が分からなかった。
どうしてこんな思いをしてまで騎士を、しかも上位騎士をやっているのか。
剣術だってロクにできなかったし、よく泣いてたし、私を苛める奴なんてザラにいた。
けれど、そんな私をいつも守ってくれたのが…殿下でした。」
レイチェルは息を吐き、顔を上げる。
泣いてはいなかった。けれど、泣きそうな顔で、目の前の女神像を見据える。