ALONES


だって、酷いじゃない。


この5年間…アルがどんな想いで生きて来たのか、知りもしないで。

勝手に殺して、空の棺を故郷に埋めて。



きっと彼は棺に入ってでも、故郷に帰りたかったと思う、それに…。

たった独りきりで彼は苦しんでいた。



今にも気が狂いそうなくらいに泣いて、泣いて、それなのに…!



けれど。

アルは優しくそんな私の手を引き止めて、「ありがとう。」と微笑む。

グッと歯を強く噛みしめて…私はただ震えた、でも…アルは。



「これでいいんだよ。こうでもしなければ僕の不在に矛盾が生まれる。それに、王位継承権を僕から弟に移すためには、この方法が一番違和感が無いんだ。」


父は優しいから、と付け加えて彼は静かに目を伏せた。

寂しくないよ、悲しくないよと、無理やり笑っているようにしか見えない。



「…それで、アルはいいの?もうあなたは王子ではなくなるわ、それどころか――」



あなたという存在が、無くなって――。



言おうとた言葉をアルは察したのか、急に私を見据え、首を振った。



「それは、違う。」



今までで一層煌めく琥珀色の瞳を私に向けて、何度も首を振った。
< 123 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop