ALONES


目前に教会が佇む中心街を見まわしながら、僕が呟くと、ようやくキーラの表情が晴れ…

「ここはどうかしら。」「ここも美味しそうね。」

と積極的に店を探し始める。


綺麗に清掃された石畳の上では露店が軒を連ね…珍しい果物や、スパイス、食器など沢山の物が売られていた。

人々が行き交う中、僕たちははぐれない様にしっかりと手を繋ぎ、あれを見て、これを見てを繰り返し…ようやく店を決めた、そんな時。



「クッソまじぃんだよこの料理はよぉ!」



ガシャンと皿が割れる音と男の罵声が飛び交って、自分たちを含む街の人々は小さく声を上げた。


どうにもこうにも、隣の料理店での揉め事らしい。


中年太りの、服装からして割と高階級そうな男が、顔を真っ赤にして叫び散らしていた。



「客にいってぇどんなメシ食わせるつもりだぁああん?」



対して店主は、そんな男に構うことなくやれやれと言った感じに腰に手を当て首を振っている。


…どうやら男は酔っているみたいだ。


リンゴ酒の瓶を片手に千鳥足でよたよたと歩き、呂律も回っていない。


とんだ横暴を繰り広げる男を見かねてか…隣にいた婦人たちが買い物かごを片手に、ひそひそと会話をし始めた。



「いやぁねぇ、また…」


「温泉掘り当てたからって調子に乗っちゃって。」


「今度は何?」


「どうせ成金野郎の道楽よ、私達を馬鹿にして。」


「奥さんが本当に可哀想だわ…。」




「とんだクソ領主ね…。」


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