ALONES
「いいですよ、僕も誤解が解けて安心しました。」
苦笑いをしながらそう言えば、僕の後ろで睨みを利かせるキーラがブツブツと呪文のように文句を言いだしたのは言うまでもなく。
ティベリオは相変わらず気まずそうにボリボリと髭をかいて、視線を泳がせる。
「いや、ちょっと嫌な予感はしてたんだよなぁ。お前が店に来た時に言おうと思ってたんだがすっかり忘れててよ…。思い出して駆け込んでみたら…まぁ、間一髪って所だな。」
許せよ、と笑う彼を一瞥し僕はため息を吐いた。
にしても、一体誰と間違えたんだと気になる所だが…これは聞いてもいいのだろうか。
しかし聞いたところで何か得がある訳でもないしなと、シスターを見る。
…やはり目が合うだけで彼女はビクリと肩を震わせる始末だ。
これはさっさとパスポートを発行して貰って、宿を探した方がいいと判断したその矢先。
ティベリオがふいに口を開いた。
「——なぁ、アルヴァスティンよ。」
バンダナの下から覗く瞳が妙に鋭くなる。
まるで獲物を捕らえるかのように、その視線が、僕を捉える。
「違ったら悪りぃんだけど。」
何事かと首を傾げた。
その視線から感じる違和感が、食事をご馳走して貰った時に感じたあの危機感と良く似ている。
——鎌をかけているような気がした。
「お前さ——。」
まさに答えを引っ張り出そうとするように、ティベリオは燭台を握りしめ、口を開いた、
が。