ALONES
「…あ…—やっぱ、いいわ。」
間の抜けた笑い声を上げ、彼は燭台を椅子に置くと頭をボリボリとかいた。
「は?」
思わず喉から漏れる、素っ頓狂な声。
とんだ拍子抜けだ。
身構えていた僕がガクンと肩を落とすぐらいに。
寧ろ何を言われるのかと、心の準備をしていた自分が恥ずかしい…。
「まー俺も歳だな…老眼かな。」
そんな僕の心の内など知るはずも無いティベリオは、何やらぼそりと独り言のように呟いて、大きな欠伸をぶちまけた。
ただ、彼が何を言おうとしていたのかという大きな疑問だけは悶々と残ったが。
「んじゃ、俺もう店に帰るわ。あ、そうそうシスターさんよ、そいつらにパスポート発行してやってくれ。」
もういいのかとこちらが焦ってしまう程あっさりと、俺の用は済んだと言わんばかりにシスターにそう告げ、僕たちに背を向けるティベリオ。
彼の本心を探る事も出来ないまま、僕は颯爽と歩み去っていく彼を慌てて呼び止める。
「—ティベリオ。」
「あん?」
振り返る彼は、相変わらずギョロリとした目をこちらに向けて。
「その、ありがとう。助かったよ。」
何はともあれ感謝の意を伝えれば、彼は「いいって事よ。」と笑いながら教会を後にした。