ALONES
「―アルヴァスティン!」
何故と、何度も繰り返した。
母は彼――兄が孤島へ行った時から、段々と部屋に籠るようになった。
始めは覚えていた。
でも徐々に分からなくなって、頭を抱えるようになった。
終いには己の記憶から父を消し去り、俺と言う存在の代わりに、兄と言う空想をはめ込むようになった。
母にとっては俺がアルヴァスティンであり…俺は生まれてなどいない。
「母上…俺はアルヴァスティンじゃないよ。」
「何を言うの、あなたはアルヴァスティン。大事な私の子よ。」
何故と、何度も繰り返した。
それでもここにきてしまう。
今母が分かるのは、兄と、ヨアだけだ。
それでも俺は、優しく頬を撫でてくれる母に縋ってしまう。
どうして――こんな事に。
細く白い手を握り返しながら、息を吐いた、直後。
「殿下!」