ALONES

勢いよく扉が開き、思わず振り返る。


するとそこには城に遣わせていたはずのアストリッドが息を切らしたまま、相当焦った様子でこちらを見つめていた。
かなりの重量があるであろう甲冑は軋み、長いブロンドの髪は乱れに乱れている。


「どうしたんだ、」


「陛下が、ロレンツェに向かうと…!」


息も絶え絶えそう告げるアストリッドをヨアがその場で支え、俺は母の手を優しく置いて早々に別れを告げる。


「また、来ます。母上。」


こんな時にも相変わらずだ。

母は朗らかに笑って、手を振る。


「いつでもいらっしゃい。」


しかしそんな彼女を振り返る事も、返事をする事もなく、俺は王妃の部屋から飛び出た。



「いつの話だ。」


「今朝です、ランベールが何やら中庭で準備をしているのを見かけて、それで…。」


「誰が護衛に付くか分かるか。」


「レイチェルと王国騎士団副団長のキール・ヴァン=ウォーロックの様です。あとは数十名の騎士団の精鋭達だと、」


長い廊下を足早に歩きながら、自室へ向かう。


「だから今朝の集会にキールの姿が無かったのか…。」


王妃の部屋に代理を置き、自らも着いてきたヨアが口を添える。


どうやらランベールはこちらが火種に着火するより先に鎮火させようとしているらしい。

そもそものいざこざを解決してしまえば、同盟は元に修復される。



それが狙いか。
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