ALONES
* * *
多分これはほんの少しの戯れで。
耳にかかる甘い吐息も、深い口づけさえも、遊びでしかなくて。
―――愛しては、いけない。
当たり前だ…そんなの。
貴方は私が死んだって手の届かない、雲の上のひと。
本当だったらこんな遊びだって許されない。
それでも—、
それでも側にいたい。
特別でいたい。
傷だらけの私でも貴方の役に立てるなら、この命さえ惜しくない。
だから、貴方の事を一番よく知る私でいさせてほしい。
「――――、」
一層大きく甘い息を零した後、アストリッドは涙に濡れた瞳を薄らと開けた。
ふわりと独特な香水の匂いを残して手を離した彼は、何事もなかったようにこの王宮で最高級に高価で豪華な椅子に腰を下ろす。
例え富と財をふんだんに使った豪華絢爛な部屋の中だとしても、その存在感は計り知れない。
彼は先程の小さな乱れさえ感じさせぬ冷静な表情で、懐から汚れの目立つ封筒を取り出すと…それを目の前にかざした。