ALONES
キーラは大きな目を開いて、僕を見た。
風は吹いていないのに、ふわりと彼女の白銀の髪が揺れる。
後悔と絶望が、余命を蝕んでいるようだ。
心臓が痛くて痛くて仕方がない。
彼女の視線が、僕から箱へと移り、箱から僕へと移り…僕から…窓の外へと移った。
そして窓の外からベッドのシーツに移った時、その瞳は優しく切なく伏せられる。
「それが…アルの望み?」
ただ、立ちすくんだ。
聞いてはいけない事を聞いてしまったと、心がすくんだ。
彼女の声音は恐ろしいほどに低く、優しく…角を増している。
「いっそ血ではなく、私を食べる?それもいいわ。…あなたが、あの人間たちと同じならば。」
不老不死の人魚伝説―――。
キーラの全てを奪った人間と、僕が…?
「でも先に、真実を――教えてあげる。」
ゆっくりと、キーラはベッドから立ち上がり、ひたりひたりと歩み寄る。
そして無防備な僕の首に両手を伸ばすと…
「勿論…喰われた人魚は死ぬわ。そして人魚を喰った人間も、数秒で急速に老いて…」
ぎゅっと…掴んだ。
「最後は泡になって、死ぬのよ。」