ALONES
だが…、いつまでも王子の事を引きずっている訳にもいかない。
ランベールは手を取り合う二人のほとぼりが冷めるのを暫く待った後、
「――とはいえ、死ぬなどと滅多な事を仰らないで頂きたいものです、陛下。」
ふ、と顔を上げ、眉間に皺を寄せながら王を見据えると、そう付け足した。
「正直な所、今貴方を失えば…この国の崩壊は一目瞭然。少々厳しい事を言うようですが、まだ齢19のエルヴィス様に国政は不可能です。…それに、ここ最近のエルヴィス様の行動を見ていると、とてもじゃないが…不安に駆られる。」
この不安は、殆どの者が感じている事だった。
最近では“エルヴィス様には口答えするな。”と言う暗黙のルールができあがり、貴族たちは勿論、自分たちも容易に口出しをすることが出来なくなってきている。
それに。
「先程の口論は、いかがなさいましたか陛下。」
ズバリと物を言う。
レイチェルと違って、誰に対してもランベールは容赦ない。
普段はヘラヘラと笑顔をぶちかましているが、真剣な話や物事になると、誰にも引けを取らない強さと冷静さを持っている。
彼は、そんな男だ。
王は分かっている、彼がそういう男だと。
だから父が第一騎士を務めていたその頃から、傍に置いているのだろう。
いつだって、的確な判断をし、的確な助言をくれる。
王はそんな彼を信頼しているからこそ、口を開く。