『無明の果て』
「そんなことないよ。
一行には一行の付き合いがあるんだから。

私はたまたま仕事。」



用意していた観光地の案内やお菓子は、行き場を失い、私をうらめしそうに睨んでいる。



「麗ちゃん、本当はね、彼女がもう一度付き合いたいって言ってて、その話してたから電話出来なかったんだ。

麗ちゃんのことは、涼から聞き出したって言ってた。

涼は自分の気持ちもあるから、なかなか教えなかったらしいけど。
嘘ついてごめん。」



「聞いてもいい?

それでどうするの?」



「どうにもならないよ。
ただの友達。」




「昨日のような事がまたあるっていうこと?」



時間をおいて



「会う事はあるかな。」




“会わないよ”


と、言わなかった一行とこのまま出かけても、豪華な料理も美味しくは感じないだろう。



結婚しているんじゃないんだから、こんな事もあるんだろう。


だけど一行、こんな時はうそでも


“会わないよ”


と言う場面じゃないの。


「出かけるね。」


さて、仕事のかわりに私を慰めてくれる一日を、どうやって過ごそうか。
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