『無明の果て』
一行がここで寝起きをし、慣れない仕事に悩み、考えもしない出来事にも遭遇し、キャリアを積んで行くんだと、そんな事を思いながら、私はようやく決心をした。



一行の転勤が決まってから、誰にも言わず考えていた事がある。


きっと誰もが驚く行動に、はたして理解を得られるのか、それは一行がどんな反応を示すのかさえ、予想が出来ない事である。



明日仕事に行く前に、一行には話しておこう。



年齢を気にしないと言ったら嘘になる。


だけど樹木は年月を重ねても、毎年美しい花を咲かせる。


そんな生き方をしたいのだ。


私が私であり続けるために。


一行は賛成してくれるだろうか。


「一行、話があるのよ。」


私はバックから封筒を取りだし、一行に見せた。



『辞表』


と書かれた封筒を。



さぁ 今度は私の番だ。
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