『無明の果て』
「嬉しいですね。
仕事は早く終わらせますから。
では後ほど。」



そして私は、アメリカへ来てしまった運命、岩沢輝と出会った運命、偶然ではなく必然が生む運命を、考えていた。



「お待たせしました。
食事はまだですね。
鈴木さんとならやはり和食がいいですね。
それでいいですか?」


「はい。
ひとりじゃない食事は久しぶりです。
急にお腹が空いてきました。」


優しい眼差しで、彼は私をエスコートした。








本社への出張は、懐かしい仲間達の嬉しい誘いもたくさんあったけれど、どうしてもそんな気持ちになれず、その足の向かう所は、始めから決まっていたのかもしれない。



路地裏の目立たないバーの名は

「M」

静かにドアを開けると、ひとりの客もいない暗い小さなステージで、園は語りかけるように歌っていた。


光の差し込んだ入り口で浮かびあがったシルエットに気付き、園は一度だけ手を振った。


そして また正面を向いて歌い続けている。


美しくて泣けてきた。




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