オレ様専務を24時間 護衛する
軽く思考が停止していると、
「んッ?!」
「1分だけ、こうしてていいですか?」
「…………あぁ」
彼女は俺の身体に抱きついて来た。
そんな彼女の背中に腕を回すと、
彼女が思っていた以上に小柄だという事が解る。
松波を抱きしめた時よりも
腕に隙間が出来るほどに華奢な身体。
そんな彼女を見下ろしていると、
ゆっくりと腕が緩んだのに気付き
俺もまた腕をはらりと解くと
…………ん?
これって、まさか………だよな??
彼女は俺のシャツをキュッと掴んで
目を閉じたまま俺を見上げている。
こういう状況に出くわした事がないが何となく解る。
これは俺が『男』だからなのか、本能的に察した。
彼女は俺からのキスを待っている。
お互いにいい歳だし、
雰囲気的にも恐らく文句ない状況だ。
けれど、何かが引っかかる。
彼女を見ていて、心の奥がピキッと痛むんだ。
何故だかは解らない。
ただ、心の底からまだ信じきれない自分がいる。
シャツを掴む手に更に力が入った気がして、
俺は少し屈んで――――――彼女にキスをした。