お隣さん家のお兄ちゃん
 


時間が時間だからなかなか出ないのか、はたまたやはり女と居るならなかなかでないのか。
それでも私がひつこく呼び出し音を聞いていたら、とうとう遼が出てきてくれた。



「……もしもし」
「あんたいい加減にしてよね」
「…は?つかお前こそ今何時だと思っての」

どうやら遼は寝ていたらしい。自分の家以外の処で、だけど。
遼は超が付く程の低血圧人間だから、今はきっと機嫌が悪いのだろう。

「理央くん来てるよ」
「理央が…?またかよ」
「まただよ」
「あいつ今日合コンだって言ってたのに……、ちょっと代わって」
「可愛い顔して寝てますが」
「かわ…ってか、なに。理央どこで寝てんの。まさか……」
「私の横に居るよ、ベッド狭すぎて私寝れないの。あんたのせいなんだからね……って、うわっ!」

唐突だった。

腰に巻き付いた腕に身体が密着する。
同時に電話を取り上げられて私は溜め息を吐いた。

「あ、遼ちゃーん?お兄様ですけどぉ。遼ちゃんが居なくてお兄ちゃんお家入れなかったけど気にしなくて良いからねぇ。だってお兄ちゃんには皐月が付いてるから寂しくないんだもん。皐月ー愛してるよー」
「ぎゃー!ヤメロっ、変態!」
「あ、切られちゃった」

にへら、と締まりの無い顔で笑った理央くんは馬鹿野郎だ。
折角遼に文句を言ってやろう、と思って掛けた電話も、呆れて切られちゃ意味がない。

「…さっきまでスヤスヤ寝てたのに、そのテンションの高さは何」
「わかんなぁい。つか皐月すげえ柔らかくて気持…」
「変態、触んな」
「いてっ」

どさくさに紛れて巻き付いたままだった理央くんの腕を叱咤する。
なんだよ、その意味の解らんセクシャルハラスメントは。

「さっちゃん、酷い…」
「何が。出ていけって言わないだけましだと思ってよね」
「つ、ツンデレ萌え…!」
「さっさと出ていけ、今すぐに」

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