ピエロ-私と中年男の記録-
冷めていく車内
私は、小指のおっちゃんという人について、何も知らなかったのだ。

家はどこなのか。

いくつなのか。


多分、知りたいとも、思っていなかった。


都合良く、遊んでいる。


そんな気がした。

年上で、車があって、優しくて、お菓子を買ってくれる人なら誰でも良かったんだ。


カーテンの隙間から、悲しそうににらんでいた女性。

小指のおっちゃんに笑顔を全く見せなかった女性。

私はにこにこ笑顔で運転する小指のおっちゃんに、冷めていっているのがわかった。



だんだんと、だんだんと。



車内で妹は歌っている。

私はいつもなら歌うのに、ずっと無言で外を眺めていた。


子持ちが、他人の子供と遊んでんじゃねーよ…



カーテンの隙間から見えた女性と、自分が重なっていた。



窓に映った私は、彼女と同じ目をしていた。
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