わらって、すきっていって。

えっちゃんはたぶん、男の子には困っていないんだろう。あまり自分のことを話したがらないから詳しいことは知らないけど。

だって、わたしが男の子だったら、きっとえっちゃんを好きになっていた。かっこよくて優しい、それでいてとってもきれいな、自慢の親友だ。


「ねー。えっちゃんは好きなひといないの?」

「いないよ。恋愛なんて面倒くさいじゃん」

「女子高生のくせにそんな三十路のOLみたいなこと言わないでよ……」

「あはは、三十路って! 失礼だなー!」


笑いごとじゃない。

せっかくぴちぴちの女子高生ライフを送っているのに、こんなどうしようもないやつの世話ばかりさせているなんて、わたしはいつまでたってもえっちゃんに頭が上がらないよ。


「……まあねー。でも、どうしようもなく忘れられないひとって、いるよね」

「え?」


驚いた。彼女の横顔が突然、真剣な表情に変わったから。

相談してほしいなんて思っているわりには、いざこんな顔をされると言葉に詰まってしまうんだから、わたしもたいがい情けない。


「またいつか話すよ。きょうはそれどころじゃないっしょ! あんたは本城のことだけ考えてな!」

「だから!! えっちゃん声!! 大きいんだって!!」


こんなに仲良しなのに、なんだかなあ。もしかして、仲良しだと思っているのはわたしだけなのかなあ。

さみしげに微笑んだ顔は一瞬で消えて、彼女の顔にはすぐにいつもの笑顔が戻ってきたから、ちょっと悲しかった。

えっちゃんも誰かに恋をしているのかな。いつか打ち明けてくれたらいいな。そしたらわたしも、気合い入れて相談に乗るのに。

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