ハンドパワー

「温秘、もうやめろよ。

気持ちを落ち着けようよ…」


春が冷静になって止めた。

両親が殺された真意を知って、また涙が出てしまった。

そのせいかもう相手に怒りをぶつける気なんて、喪失してしまった。


「おまえ確か、合田春って言ったよな」

渡辺貴雄は私から視線を反らし、春の方に向けた。

「そうだけど」

「……………」

春が返事したのにも関わらず、渡辺貴雄は黙った。


「貴雄、言いなさい」

今まで黙っていた渡辺さんが口を開いた。
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