欲情するくちびる
背中から抱きすくめられて、どうしてだろう、体の奥がじんじんとうずく。
……ひどく気持ちいい。
キスって、こんなに気持ちのいいものだったっけ。
つきあって2年になる彼氏とは、最近マンネリぎみだ。
つきあっているからなんとなくキスをして、つきあっているからなんとなく体を合わせて。
そこに愛欲はもう存在してないのかもしれない、とうすうすと勘づいていながら、それなのに、なんとなく離れられずにいた。
だけど。
失うのが恐いんじゃない。
別れる理由がないから。
惰性だけでだらだらとつきあいを続けていた。
彼氏じゃない男性とキスをして、長くくすぶっていた気持ちに火がついたような気がした。
ようやくキスから解放されると、どこか熱のこもった眼差しで私を見つめてくる彼と出会う。
目が潤んでいるのは、アルコールのせいだけじゃないだろう。
「……どうして」
先に言葉を発したのは、私だった。
どうして、キスをしたりしたの。
あなたの彼女は、私の友人なのに。
「前から君のこと、気になってた」
「……嘘」
「嘘じゃない。ねえ、2人で抜けない?」
笑顔の誘惑を断る理由など、なかった。
【完】
